コラム: 米国の州で地金・コインの売上税免除をめぐる攻防 2州で復活法案
Numismatic Newsは2026年2月12日、米国の州で貴金属の地金・コイン・通貨にかかる売上税の免除を廃止する動きについて、パトリック・A・ヘラー氏のコラムを掲載しました。筆者は、免除の廃止は州の税収をかえって減らすと主張し、過去に廃止・停止した4州の例を挙げています。掲載時点で、2025年7月1日付で免除を廃止したメリーランド州と2026年1月1日付で廃止したワシントン州では復活の法案が、ネブラスカ州とニューヨーク州では廃止の法案が議会に出ていました。
訂正(2026年10月13日) 題・要約・本文を出典に合わせて書き直しました。出典はNumismatic Newsに2026年2月12日に掲載されたパトリック・A・ヘラー氏のコラムで、旧記事は筆者の主張を確認された事実のように書き、出典にない免除制度の起源(インフレ期の政策)、約20州という州の数、市場規模・雇用者数・収集家数、対象となる貨種の例、業界団体の分析や州政府の代替案を加えていました。これらを削り、出典が挙げる4州の例と2026年の各州の法案を加えました。旧題は「貴金属の売上税免除廃止は税収」(英題「Precious Metals Sales Tax Repeals May Reduce State Revenue」)です。
※この記事は、2026年2月12日にNumismatic Newsが掲載したコラムに基づきます。筆者のパトリック・A・ヘラー氏は、全米コイン・地金協会(NCBA)で業界問題の助言役を無報酬で務めています。以下の見方や数字の多くは、筆者の主張として紹介します。
免除の見直しが進む背景
筆者によると、連邦政府からの交付金の減少などで、多くの州が財政に苦しんでいます。そのため、いくつかの州の議員が税収を増やす方法を探しており、その一つが売上税・使用税の免除の見直しだと筆者は書いています。
免除をなくせば税収は増える、というのが一般的な考え方です。筆者は、多くの品目ではそのとおりだが、貴金属の地金・コイン・通貨では逆になると主張しています。
筆者が挙げる理由
筆者は、コインや地金の販売店は、地金・コインの売上税のほかにも、いくつもの形で税収を生んでいると説明します。宝飾品や骨董品、収集用品など、免除の対象外の商品も売っていること。免除のある州では人口当たりのコインの展示即売会(コインショー)が多く、来場者も多いため、宿泊・飲食業の課税売上が増えること。州内の従業員が給料の一部を課税対象の品に使うことです。1990年代のミシガン州財務局の調査では、給与の38.5%が売上税のかかる品に使われていたと筆者は書いています。
筆者によれば、免除が廃止されると州内の販売店の売上は大きく落ち、閉店や人員削減、州外への移転が起きます。コインショーも減ります。地金やコインの売上税はわずかに増えても、ほかの税収の減少がそれを上回る、というのが筆者の主張です。
また筆者は、大口の買い手には売上税を払わずに買う方法がいくつもあると指摘します。デラウェア州など州外の保管庫に預ける形での購入、金・銀などの上場投資信託(ETF)の購入、オーストラリアのパース造幣局などの保管庫にある大型地金の持ち分の購入、資産を州外で保管する自己運用型の個人退職口座(IRA)、鉱山会社の株式です。
筆者は、自分がかつて経営していた会社の例も挙げています。ミシガン州で1999年半ばに免除ができる前は、州内の小売の地金・コイン売上のうち1,000ドル以上の取引はおよそ1%でした。免除ができた後は、州内の小売売上の94%が5,000ドル以上の取引になったといいます。
過去に廃止・停止した4州
筆者は、2025年より前に免除を廃止または停止した4州の例を挙げています。
- フロリダ州: 1990年代に免除を廃止しました。コインショーの中止や州外移転が相次ぎ、オレンジ郡の観光局は、州の宿泊・飲食業の売上が年6,000万ドル減ったと見積もりました。 - コロラド州: 免除の廃止後、議会の大多数が復活に賛成しました。知事は2度拒否権を使いましたが、2度目の拒否権を議会が覆しました。 - オハイオ州: 2005年に免除を廃止しました。週刊紙Coin Worldは、6か月以内に州内の100の販売店が閉店・人員削減・州外移転をしたと報じました。予定されていた主要なコインショーもすべて中止になりました。 - ルイジアナ州: 2016年4月1日から27か月間、300近い売上税・使用税の免除や税額控除を停止しました。2017年には、似た内容の免除が停止期間の終わる前に復活しました。停止期間の終わる前に戻された免除・控除は4件だけで、そのうちの1件です。
筆者によると、この4州はいずれも同じか似た免除を復活させました。
掲載時点の各州の法案
メリーランド州議会は昨年、2025年7月1日付でコイン・地金の免除を廃止しました。ボルチモア・コンベンションセンターでの販売だけは例外でした。コラムの掲載時点では、この例外も2026年6月30日で終わる可能性があるとされていました。ワシントン州も、2026年1月1日付で同様の免除を廃止しました。
掲載時点で、両州では免除を復活させる法案が議会に出ていました。メリーランド州は下院法案500号と上院法案309号、ワシントン州は下院法案2115号と上院法案5894号です。両州とも、販売店の連合が成立への支持を広げようとしていました。
一方、ネブラスカ州では、知事の要請により、免除を廃止する法案LB1244が出ていました。ニューヨーク州では、昨年廃案になった貴金属の売上税免除の廃止案が、今年、下院法案A8511と上院法案S7875として再び出されました。両州の販売店は、これらの法案を止めようと動いていました。
筆者は、NCBAがこれらの州での取り組みの調整に協力していると書いています。
出典: Numismatic News「Resisting Rollbacks of Coin/Precious Metals Sales Tax Exemptions」(2026年2月12日)
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