第三者鑑定はコインの価値をどう変えたか:高評価と「傷あり」で明暗が分かれる3つの事例
英国の貨幣商が、第三者鑑定がコイン市場に与える影響について3つの事例を挙げて論じました。 鑑定で高評価を得たコインは価格が高騰する一方、わずかな傷で評価が下がるコインは価値が大きく下落する現状を指摘しています。 この記事では、鑑定結果がコインの価格をいかに左右し、鑑定システムの課題点がどこにあるのかを解説します。
過去20年でコイン価格が高騰、第三者鑑定が市場のルールを変えた
英国の貨幣ディーラーBaldwin'sは2023年6月12日、コインの価格が過去20年で大幅に上昇した背景と、第三者鑑定機関(TPG)が市場に与えた影響についての見解を公開しました。
価格上昇の要因として、不安定な経済、低金利、銀行への不信感が挙げられています。特に、希少で保存状態が極めて良いコインが大きな値上がりを見せました。このトレンドを後押ししたのが第三者鑑定です。特にパンデミック下では、コインを直接確認できない状況で、第三者による客観的な状態評価の需要が高まりました。
投稿者は、第三者鑑定が市場を根本的に変え、記録的な価格を生み出す一方で、最高品質のコインの価値を破壊してきた側面もあると指摘。本稿では、状態、希少性、第三者鑑定の影響が異なる3枚のコインを例に、その功罪を検証しています。
NGC鑑定PF65、最高評価のジョージ2世ギニー金貨が示す成功例
最初の事例は、NGCによってPF65と鑑定された1729年のジョージ2世プルーフギニー金貨です。このコインは、状態、希少性、第三者鑑定という3つの要素がすべてプラスに働いた典型例とされています。
* 状態: プルーフ貨として非常に高い品質を保ち、鏡面のフィールドと摩耗のないデザインが特徴です。 * 希少性: 希少度R4(現存11〜20枚)とされますが、実際はさらに希少である可能性が示唆されています。過去20年のオークションでは、2017年に状態が劣るPF64の個体が45,600ポンドで取引された例があるのみです。 * 第三者鑑定: PF65というグレードは鑑定された中で最高であり、この希少性を考えると、これ以上のグレードが出る可能性は低いと見られています。
これらの点から、このコインは投資家・コレクターにとって完璧な選択肢であり、現在の市場動向を考慮すると100,000ポンドに近い価値があると推定されています。
鑑定の恩恵を受けず、歴史的価値が価格に反映されないカーライル包囲戦貨
2つ目の事例は、1645年にイングランド内戦下のカーライル包囲戦で造られた3シリング銀貨です。このコインは、歴史的な重要性が高い一方で、第三者鑑定の恩恵を受けにくい例として挙げられています。
* 状態: 包囲下の緊急時に城内の銀食器などを溶かして急いで製造されたため、高状態のものは存在しません。提示された個体も打刻は粗いものの、日付や額面(III)は確認でき、この種のコインとしては典型的な状態です。 * 希少性: 現存数は10枚未満とされ、極めて希少です。 * 第三者鑑定: 元々の打刻品質が低いため、鑑定に出しても高い数値グレードは期待できません。そのため鑑定に出すメリットが少なく、結果として、このコインの価値は過去20年間で大きく上昇していないと指摘されています。歴史的背景から常に需要はありますが、第三者鑑定が主流の市場では過小評価されていると述べられています。
わずかな傷で「数値なし」、初代ソブリン金貨が直面する価値の壁
3つ目の事例は、ヘンリー7世の治世に造られた、史上初のソブリン金貨です。このコインは、わずかな欠点によって第三者鑑定がその価値を大きく引き下げてしまう問題点を浮き彫りにしています。
* 状態: この個体は、この時代の金貨としては珍しく打刻が鮮明で、王の肖像もはっきりしており、現存する中でも最高級の個体の一つと評価されています。しかし、注意深く観察しないと分からない程度の、ごくわずかな傷があります。 * 希少性: 史上初のソブリン金貨として発行数は限られ、現存数も少なく、多くは打刻状態が悪いものです。 * 第三者鑑定: このわずかな傷が原因で、数値グレードが付与されず、「Details」(詳細情報あり)という評価になる可能性が高いとされています。
このコインの2023年版カタログ価格はVF(Very Fine)状態で165,000ポンドです。2010年には、傷のない類似品が186,000ポンドで落札されました。その価格が現在では300,000ポンド以上になると推定されるのに対し、この傷のある個体は「その半額程度」となり、価格が大幅に下がると説明されています。
20年前の1割引きが、今や8割引きを生む鑑定システムの歪み
投稿者は、第三者鑑定の最大の問題点として、わずかな欠点を持つコインへの評価を挙げています。20年前であれば、最高級の5ギニー金貨にわずかな傷があった場合、価格は10,000ポンドから9,000ポンドへと少し下がる程度でした。傷があっても見た目が良ければ、依然として最高級品の一つと見なされていました。
しかし現在の市場では、第三者鑑定によって傷のないコインが「MS63」(推定価格150,000〜200,000ポンド)、わずかな傷のあるコインが「Unc Details」(推定価格30,000〜40,000ポンド)と評価され、価格に天文学的な差が生まれます。この価格差は、コインが持つ本来の希少性や美しさを反映しておらず、不当であると主張しています。
この問題を解決するため、投稿者は代替案を提示しています。例えば、欠点の深刻さに応じて低い数値グレードを与えるか、あるいは「AU58 light scratches」のように、本来のグレードと欠点の両方を表記する方法です。こうした見直しによって、希少なコインがわずかな欠点のみで過小評価される現状が是正されるべきだと結論付けています。
よくある質問
過去20年間でアンティークコイン相場はどの程度上昇していますか?
古銭の価値評価において第三者鑑定制度が導入されたきっかけは何ですか?
第三者鑑定企業は価格判定以外にどのようなサービスを提供していますか?
日本国内の古銭評価基準はどのように変化していますか?
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